HUNTER×HUNTERの新しい単行本を買った日、いつもなら夜のうちに読み終えているはずのそれを、なぜか開かずに机の上へ置いたままにしていました。
これまではずっと、新しい巻が出るたびに読み始めては続きが気になって、そのまま最後まで一気に読んでしまっていました。かかるのはせいぜい数時間で、読み終えてしまえばあとは、次の巻が出るまでの長い時間が残されます。それが1年なのか2年なのか、あるいはもっと先になるのかは、いつも分かりません。
数時間で読み終えたものを、何百日もかけて待つ。これはよく考えると、ずいぶん妙な時間の使い方ではないでしょうか。読む速さと待つ速さが、あまりにも釣り合っていません。それなら、いっそ読む方を待つ方に合わせてしまったら、どうなるのでしょう。
次の巻が2年後に出ると仮定して、その2年で39巻を読み切る。1週間に進めるのは、2ページ前後だけ。読み終えたら、続きが気になっても本を閉じて、また次の週まで待ちます。そういう読み方を、しばらく続けてみることにしました。
速く読むことに慣れすぎている
漫画に限らず、このごろは何もかもを速く消費している気がします。動画は倍速で流し、記事は見出しだけ拾い、長い文章は要約してもらって済ませてしまう。便利ですし、これからも手放すつもりはありません。
ただ、そうやってすべてを速く片づけているからこそ、一つくらいは極端に遅いものが手元にあってもいいのではないでしょうか。一冊の漫画に2年をかけるなんて、効率でいえば最悪ですし、まるで合理的じゃない。でも、その合理的でなさこそが、今はむしろ面白そうに見えています。速く読むことで、僕はいったい何を通り過ぎてきたのでしょう。
週に2ページで何が書けるのか
正直に言うと、これは自分でもまだ見当がついていません。たった2ページについて、本当に毎週何か書けるものでしょうか。
何ひとつ心が動かない週もあるでしょうし、話がほとんど進まないまま終わる週もあるはずです。登場人物の名前を最後まで覚えられないかもしれませんし、せっかく立てた予想が翌週あっさり外れることも、きっと何度もあります。それでも、その時々に考えたことは、うまくまとまっていなくてもそのまま書き残しておきたいと思っています。
いつもの速さで読んでいたら素通りしていたはずのコマを、この読み方なら何度も見返すことになります。台詞の並び順や、視線の向き、言葉の途切れた一瞬。そういうものが、そのとき妙に気にかかるのかもしれません。何を読んでも「よく分からない」としか書けない週があったとして、それは失敗なのでしょうか。たぶん、そうではない気がします。分からなかったということも、そのまま正直に残すつもりです。
だからここには、きれいに整った正解の考察だけを並べるつもりはありません。外れた予想も消しませんし、途中で考えが変わったなら、変わったということ自体を書きます。正解集をつくりたいわけではなくて、読んでいる途中の、まだ何も分かっていない状態のほうを記録に残したいのです。
部則を決めた
始めるにあたって、いくつか自分なりのルールを決めました。1週間に決めた分より先へは進まないこと。まだ読んでいないページを先回りして読まないこと。その代わり、一度読んだページへ戻るのは何度でも自由にすること。そして、間違った予想も消さずに残しておくこと。
なかでも気に入っているのが、「進むのは禁止。戻るのは自由。」という一文です。先へ進めるのは週にたった一度きりなのに、分からなくなったときには、いつでも好きなだけ引き返せる。前にしか進めないはずの読書で、後ろにだけは自由に歩ける。この妙な感触が、なぜだかしっくりくるのです。
2年後、どうなっているか
2年後に本当に次の巻が出ているのかも、この企画が最後まで続いているのかも、今の時点では何も分かりません。途中で生活が変わって、更新が滞る週だって出てくるでしょう。そもそも、こんな読み方を2年も続けられるのでしょうか。
それでも、とりあえず始めてみることにしました。
今この時点で、39巻はまだ1ページも開いていません。ここからの104週間をかけて、一冊を読んでいきます。次の記事で、ようやく最初のページをめくります。そうしてほんの少しだけ読んだら、また本を閉じます。
そのとき僕は、いったい何を思うのでしょう。